初めて書いた、”オリジナル”のKAITO。
――いや、ウソだ、"VOCALOID"じゃない似て非なる存在の”カイト”を本で書いたや……。もともと創作文芸の方で”生きた人形”というのをつくる人の話を書いていまして、それで。
でも、ボーカロイドのカイト、は、
誰か特定のモデルがいるわけではない"KAITO"を書くのは、初めてです。
KAITOとマスター(男)のお話。
ナチュラルにちゅーとかしてますが、うん、そんなかんじです(どんな)。
ちなみにKAITO―ボーカロイドは実体を持ってるアンドロイドみたいな設定です。近未来的なナニカ。
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一夜一夜に口づけを
―― Vocaloid"KAITO" and his MASTER
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マスターの自室の前に立ち、扉を小さくノックする。が、返事はない。
やはりそうか、と軽く息を吐いて、今一度ノックをした後、声をかけて扉を開けた。
「マスター」
ディスプレイを見つめる背中は振り向く様子もなく、集中していることが分かる。
マスターはいつも、作業に集中してしまうと周りが見えなくなるのだ。当然、時間感覚も薄れてしまう。寝食そっちのけで作業に没頭してしまうため、俺は自然とマスターのスケジュール管理をするようになった。
「マスター、そろそろ就寝の時間ですよ」
すぐ近くまで寄って、少し大きめに声をかけた。
これくらいすれば、さすがに気がつくことも多いのだが、今日はそれでもダメらしい。
仕方のない人だ、と息を吐いて、手に持ったマグカップを傍らへ置いてから、マスターの肩越しに腕を回した。
「マスター」
「――っぅわっ!? ……カ、カイト……? もう、おどかすなよ……」
「何度もお声かけしたのですが、お返事を一向にいただけなかったもので」
「あー……悪い……」
「集中力があるのは良いことだと思います。が、そろそろ寝ないと明日に差し支えます」
「ああ、もうこんな時間なのか……なんか全然眠くないんだけど」
「気が昂ぶっているからでしょう。そう思ってホットミルクをお持ちしましたよ」
身体を離し、傍らに置いたマグカップを掲げてみせると、マスターの顔が綻んだ。
「お、用意いいな。ありがとう」
「マスターの思考くらいお見通しですから」
「おれの、しこう……?」
「――嗜好、でもいいですけど」
そう言って唇を触れさせると、マスターの身体が小さく身動いだ。椅子が軋んだ音を立てる。
「な、にすん……」
「マスターがすぐに気づいてくれない可能性があったので、ホットミルクの温度がいつもより高いんです。そのまま渡すと、マスター、火傷するでしょう?」
猫舌のくせに、湯気の立つものをなぜか警戒しないマスターは、しばしば唇や口の中に火傷を負う。
その度眉をひそめて氷を咥える姿を見せられて、俺がどう思うか、この人の念頭にはないらしい。
――自覚はある、俺の心は相当狭い。
PCのメモリを増設するみたいに、度量も広くすることが出来ればいいのに。
「こうすれば、少し冷めて、ちょうど良くなりますよ」
甘い香りのするホットミルクを口に含み、マスターに顔を寄せる。
マスターの唇から漏れるため息に、しょうがないな、というようなニュアンスが感じられたのは気のせいということにして、そのまま少し荒れた唇の間にミルクを流し込んだ。
「また唇噛みましたね? ちゃんとリップクリーム塗ってくださいって言ったのに」
唇を噛むのは、作業をしているときのマスターのクセだ。
なんでも、リズムを取るのに手や足ではなく唇を使うらしい。ミックス時にも、唇や歯や舌を、思う音を位置するところに触れさせて。だから作業中のマスターは、端から見ているとチューインガムでも噛んでいるように見える。
確かに両手指は複数の機器を操作するのに使いっぱなしだし、足はキャスター付きの椅子でそれらの機器の前を移動するために使用中ではある。が、ミックスイメージを脳内ではなく口腔内に描くというのはどうなんだろう……。マスター以外の人の音作りを知らないけれど、コレは少数派に違いない。
そんなマスターの口の中は、つまり、マスターの思い描く音楽が詰まっている。
だから、俺がそこに触れたいと願うのは、自然なことでしょう?
「めんどくさい……」
「なら俺が塗ってあげます」
そう言ってマスターの顎に触れると慌てて手を制された。
「いやいや、今それ飲んでる最中だし。っつーか、もうそのまま飲んでも大丈夫だろ」
「零すかも知れないので俺が飲ませてあげます」
「零さないって」
「そう言って先日キーボードをコーヒー塗れにしたのは誰でしたっけ?」
「う゛っ……」
「ですから。――ね……」
また含んだミルクは、先刻よりもぬるくなっている。触れ合わせた唇の隙間からマスターの口の中に注ぎ、仰向いた喉が微かに音を立てるのを待って、舌を滑りこませた。
「んっ、……」
絡ませた舌は、ミルクの香り。
離すと顔をしかめたマスターに睨まれた。
「カイト、マグカップ寄越せ。少し離れて飲めば、被害ないだろ」
「自分に零すじゃないですか」
「お前が変なコトしなきゃ零さないよ!」
「変なコトって……酷いですね……」
大げさに嘆息しつつも、マグカップを渡すと、マスターは慎重に両手で受け取り、抱えるようにしてミルクを飲み始めた。それを横目に、俺は部屋の片付けを始める。
毎日毎日、よくぞここまでと思うくらい、マスターの部屋は散らかっている。
端末回りはともかく、ベッドの上の荷物は退かさないと寝られないので、寝る前の片付けは欠かすことの出来ない日課だ。
ボーカロイドとして歌を歌うより、こうして片付けやら何やら、家事関係をやっている時間の方が多い気がするのは、きっと気のせいじゃない。
けれど、マスターのためになるなら、マスターが音楽に触れる時間がその分増えるなら、構わない。
どうせ俺の身柄が空いていても、マスターが俺を歌わせられる状態にないなら暇なだけなのだ。
他の楽器など使わずに、全部俺の音だけで音楽を作ってくれたらいいのに。そう思うこともあるけれど、それは過ぎた望みだろう。俺は、人間の声では不可能な様々な音が出せるけれど、やはり限度というものはある。
マスターが、俺の音を活かすためにと他の音を使うのを知っているから、俺は、その音の中に俺のための居場所が出来上がるまで待つしかない。
マスター、マスター、早くあなたの音の中に入りたい。
あなたの音の中に包まれる至福の時を、早く、長く、永く。
「――カイト? どうかしたか?」
ふいに背後から声が聞こえ、腕にマスターの手が触れた。
指先の感触に震えれば、驚く気配。
「わっ? 悪い、そんな驚くなんて……」
「マスター」
戸惑って浮いたマスターの手を振り向きざま掴み、引き寄せて抱きしめる。
「わ、ちょっ……」
「マスター」
名を呼べば、腕の中の身体が小さく震えた。ちょうど息が耳をくすぐったのだろう。
少しだけ俺の方が大きい、このバランスがちょうど良い。
「マスター……、早く…あなたの曲を聴かせてください……」
「っ……、なんだ……」
そっちか、とマスターがほっと息を吐いて力を抜いた。
――生み出す音の作り込みようとは裏腹、本当に迂闊な人だと思う。
「おや。何だと思ったんですか?」
わざと声を低め、耳元で囁いてやれば、首すじがさっと色づいて、体温が増した。
「…や、何でも……」
「ないはずはないでしょう?」
頬にキスを落として、次は耳朶に。首を竦め身体を強ばらせるマスターを離さないまま耳元で笑って、頬を擦り寄せた。
「マスター」
喉が震えた気配がしたが、返事はない。
「ね、マスター…」
もう一度呼んで、頬に唇を触れる。
「っ、も、離せ……寝る時間なくなる……」
「――ああ、そうでした」
もう少しと言わずずっとこうしていたいのは山々だけれど、マスターの睡眠確保が第一だ。
仕方なく腕をゆるめると、ぐいと胸を押され、引き離された。あやうくベッドの上に倒れそうになり、踏みとどまる。
ああこのまま倒れてしまえば良かった、とすぐに思ったけれど、後の祭りだ。
「すみません、恥ずかしがっているマスターが可愛くて、つい」
「つい、じゃない……」
「だって、マスター、俺の声好きでしょう?」
ボーカロイド『KAITO』は、世の中にたくさんいる。けれど、【この声】で話す【カイト】は、俺だけだ。
俺だけのマスターが調整した、俺だけの声。マスターのためだけの声。
「俺の声は、あなたのためだけのもの。あなたのためにだけ歌う、この唇も、耳も、手も足も身体中全部……あなただけのもの、…でしょう?」
「――あったりまえだろ、今更言わせんな!」
ぐいとマフラーを引かれ、乱暴に唇をぶつけられた。正直言って痛いけれど、それでも嬉しく思う。
狭量な心は、すぐ飢えるけれど、簡単に満たされもする。
俺のためにと作られる音、たったひとつの口づけで。
「ほら、早く寝るぞ。明日はお前の声入れるからな、覚悟しとけよ」
布団を大きく捲り上げ、ベッドに乗り上げながらマスターが告げた。
「はい、マスター」
微笑んでベッドに膝をつく。
寝転がったマスターの背に向け身を屈めれば、足の下、ベッドが軋んだ音を立てた。
Fin.
― + ― + ― + ―
歌を歌うための唇を違うことに使うKAITOさんの話w
ってことで、カイマスちゅっちゅ話~♪
……のはずが、あれ?ほっぺたちゅっちゅだけじゃなくなって……る……?
つーかナチュラルに毎晩ちゅーしてるってことですねこの人たちww
ついったで某ボカロマスタ様とお話させていただいてて、遠隔ちゅーしたら(貴様)、照れてて超可愛かったので、……ってのがモトなんですが、なんかカイトが無駄にエロイトに……。意図的にフェロモンパラメータあげてそうだ(そんなモンはない)。
――あの人のトコのカイトも結構なフェロモノイドだけど、こーゆー露骨なセクハラじゃなくて、もう少し婉曲的なえろいことをしそうなかんじだな……とか妄想……。
そして神曲『マイマスター』を曲解しましたスミマセンスミマセン!
だってするよね! hshsするよね!
カイマスでもマスカイでもイけるが、今回はカイマスでww
(今回は……?)
Special Thanks to Michiru-sama !
こんな初書きエロイトで良かったらもらってヤってください、とか、ここにこっそり書いておく←
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